皆さんは、2020年11月15日、ベトナム人技能実習生のレー・ティ・トゥイ・リンさんがたったひとり出産し、畳の上で双子の赤ちゃんを死産させ有罪判決を受けていることをご存知でしょうか?
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リンさんは、父親が病で働けないため、一人で家計を支える母を助けようと、2018年8月に19歳で来日し、熊本県内の柑橘農家で懸命に働いてきました。来日前ベトナムの送り出し機関に150万円の借金をしていたため、手取り12万円の中から10万円をベトナムに送金し、ほとんど休みなく働き1年半かけて返済しました。その矢先の2020年5月頃妊娠に気が付きましたが、妊娠により強制的に帰国させられるケースが相次ぐ中、リンさんも帰国させられることを恐れ誰にも相談できず、働ける限り働いて、帰国した後に出産して育てようと考えていました。
2020年11月14日の夜、リンさんは激しい腹痛に襲われ、一晩中痛みと出血、孤独と恐怖にさいなまれながら双子の赤ちゃんを出産しました。動かない赤ちゃんを見てとても悲しく、手近にあった段ボール箱を棺がわりにタオルを敷いて双子の遺体を安置しました。名前をつけ「ごめんね、私の双子の赤ちゃん!!早く安らかなところに入れますように」と書いた手紙を添えました。
翌朝、死産したリンさんは雇用主により病院に連れて行かれ、医師が警察に通報したため、退院と同時に逮捕され、死体遺棄罪で起訴されてしまいました。その後、2021年7月、熊本地方裁判所において懲役8カ月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡されました。
杉原崇夫裁判官は、リンさんのしたことは、遺体を火葬して墓地に埋葬する準備でないと考えられるために有罪としましたが、私たちは日本語も死や葬儀に関する日本の習慣や法律も分らないリンさんが産後直後にできたことは限られ、置かれた立場の中で最大限の事をされたと考えます。
現在日本では、40万人近くの技能実習生を受け入れ、その技能実習生の方々の労働によって、日本の多くの人々の暮らしが支えられています。けれど、技能実習生には、人として保障されているはずの職業選択や居住移転の自由、日本で妊娠し、出産したりする自由が実質的に認められておらず、海外の諸外国からも、「現代の奴隷制度」として批判されています。
私たちはリンさん一人を犯罪者として罰することでこの問題を終わらせたくありません。リンさんは無罪であると考え、一審判決を破棄したうえで無罪の判決が言い渡されることを強く求めます。